本を受け取れる場所を調べる
青葉区データ

図書館が足りないと言い続けて20年
青葉区は、別の道を選んでいました

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2026年9月26日取材・文 横浜青葉チャンネル編集部

横浜市立図書館は18区に1館ずつ。青葉区にあるのは、あざみ野の山内図書館だけです。ただ「本を借りられる場所」を数えると話が変わります。区内には市立図書館とは別に、2万8千冊を持つ青葉台コミュニティハウス「本の家」があり、地区センターの図書コーナーが6か所、学校を開放した市民図書室が6か所あります。そのうえで、予約した本を受け取れる「図書取次拠点」は市内12か所のうち7か所が青葉区です。始まりは2004年の区民意識調査でした。

この記事のポイント

01

「市立図書館が1館」は18区すべて同じ

横浜市立図書館は中央図書館と17の地域図書館で、各区に1館ずつ。青葉区だけが少ないわけではありません。ただ、青葉区の人口は30万7千人で市内2位、面積は35.22平方キロメートルで市内2位です。1館がカバーする人と土地は市内でも広いほうになります。

02

市内12か所の本の受取拠点のうち、7か所が青葉区

予約した本を地区センターなどで受け取れる「図書取次サービス」の拠点は、令和8年9月時点で市内12か所。そのうち7か所が青葉区にあります。残り5か所が他の17区に散っている計算です。

03

きっかけは2004年の調査だった

2004年度の青葉区民意識調査で「日常生活で不足・不便と思うこと」の1位が図書館でした。区役所はそこから動き、2005年に市が尾駅へ図書返却ポストを設置します。図書館カードで扉が開く仕組みは全国初でした。

市立図書館は1館。でも本を借りられる場所は区内に十数か所ある

まず、思っていたのと違いました

「青葉区には図書館が1つしかない」。そう書き出すつもりで調べはじめました。人口30万7千人の区に1館なら、少ないと言えそうだったからです。

ところが横浜市立図書館の一覧を見ると、18区すべてが1館ずつでした。中央図書館が西区にあり、あとの17区に地域図書館が1館。青葉区だけが冷遇されているという話ではありません。書き出しが成立しなくなりました。

そして、もうひとつ間違っていました。「図書館が1つ」というのは市立図書館の数であって、本を借りられる場所の数ではありません。

青葉台駅から歩いて数分のところに、青葉台コミュニティハウス「本の家」があります。蔵書は2万8千冊。名前はコミュニティハウスですが、もともと1972年に「緑区青少年図書館」として開館した図書館でした。区制が変わって青葉区青少年図書館になり、1999年5月にいまの名前になっています。絵本と紙芝居が充実しているのはその名残です。住所を確認できるものを持っていけば、その日から借りられます。

それだけではありません。区内の地区センターは6か所(山内・若草台・大場みすずが丘・藤が丘・奈良・美しが丘西)で、それぞれに図書コーナーがあります。さらに学校の図書室を地域に開放した「市民図書室」が、鉄小、田奈小、もえぎ野小、美しが丘東小、嶮山小、鴨志田中の6校にあります。これは市内63校のうちの6校で、区別では港南区・金沢区・戸塚区の8校に次ぐ多さです。

つまり「図書館が1館しかない」のではなく、「市立図書館が1館で、そのほかに本を借りられる場所が十数か所ある」のが青葉区の実際でした。

ここから先の数字は市立図書館だけの話です。ただ、いま挙げた場所が後半で効いてきます。

1館あたりで背負うものは、たしかに大きい

ただ、同じ1館でも中身は違います。青葉区の人口は30万7,343人で市内2位、面積は35.22平方キロメートルで戸塚区に次ぐ2位。人口も面積も上位の区が、他の区と同じ1館です。

山内図書館は延床2,147平方メートル、座席80席。数字だけなら市内の地域図書館では大きいほうで、座席数は港北の109席に次ぐ2番目です。貸出冊数も65万52冊で市内4位、1日あたりの入館者1,298.9人も4位。使われていないわけではなく、むしろよく使われている館です。

それでも区民1人あたりの貸出は2.12冊で、18区の真ん中あたりでした。1位は都筑区の4.72冊で、2倍以上の差があります。よく使われている館なのに1人あたりでは伸びない。単純に、人が多すぎるのだと思います。

そして、位置の問題がある

山内図書館はあざみ野駅から徒歩3分。駅前という意味では良い場所です。ただ、青葉区の地図でいうと東の端、川崎市との境に近いあたりにあります。

青葉区は東西に長い区です。区の西側、田奈や恩田、奈良町のあたりから山内図書館へ行こうとすると、田園都市線で青葉台からあざみ野まで出て、そこから歩くことになります。奈良町のこどもの国周辺からだと、バスと電車を乗り継ぐことになります。

この立地の不便さは、実は横浜市自身が20年以上前に認めていました。

2004年、区民が挙げた1位は「図書館」だった

横浜市政策局が出している調査季報という冊子があります。その第157号に、青葉区役所の職員が書いた報告が載っていました。

2004年度に実施した青葉区民意識調査で、「日常生活で不足・不便と思うこと」の第1位になった項目が、図書館でした。報告はその理由を、山内図書館が区の東部の区境付近にあるという立地条件にあるとはっきり書いています。

区役所は図書館を増やしてほしいと教育委員会に要望を出し続けましたが、新しい館を建てる計画は立ちませんでした。そこで2004年6月にプロジェクトが立ち上がります。建物を建てずに、本に近づく方法はないか、という方向でした。

2005年5月16日、市が尾駅に箱が置かれた

出てきた答えが、駅に返却ポストを置くことでした。2005年5月16日、田園都市線の市が尾駅に横浜市内で初めての駅の図書返却ポストが設置されます。

駅に本を入れる箱を置くだけなら簡単そうですが、誰でも何でも投げ込める箱を駅に置くわけにはいきません。そこで、図書館カードを読み取って扉のロックが開く仕組みをポストに積みました。報告によれば、これは全国でも初めての方式でした。

いま青葉台駅とたまプラーザ駅にも同じポストがあります。青葉台は改札口のそば、市が尾は改札外の券売機前、たまプラーザは東急ストアの入口付近。年末年始以外は毎日使えます。区内の駅を使う人なら、帰り道に本を返せます。

返すだけでなく、受け取れるようにもなった

20年かけて、この方向はさらに広がりました。いま青葉区には、予約した本を受け取れる場所が7か所あります。美しが丘西、大場みすずが丘、奈良、藤が丘、若草台の各地区センター、青葉区区民交流センター、そして青葉台コミュニティハウス「本の家」です。

並べてみると、選ばれた7か所は偶然ではありません。もともと自前の図書コーナーを持っていた施設に、市立図書館の本の受け取り機能を足した形です。本の家は元が青少年図書館で、地区センターにはもとから図書コーナーがある。本を扱うカウンターがすでにあるところに乗せたわけです。市内12か所のうち7か所が青葉区に集まっている理由は、たぶんここにもあります。

ここで数字が効いてきます。横浜市の図書取次拠点は、令和8年9月時点で市内に12か所。そのうち7か所が青葉区です。残る5か所は都筑区、港北区、旭区、戸塚区、港南区に1か所ずつ。つまり17区ぶんを5か所で分け合っていて、青葉区だけが7か所を持っています。

横浜市立図書館のサイトで蔵書を検索し、受け取り場所にこれらの施設を指定して予約する。本が届くとメールが来るので、受付時間内にカウンターへ行く。仕組みとしてはそれだけです。図書館まで行かなくても本が手元に来ます。

移動図書館「はまかぜ号」も区内に2か所来ています。奈良町第三公園と奈良山公園で、どちらも隔週火曜日の午後。市内30か所の巡回先のうちの2か所です。山内図書館から最も遠い奈良町に来ているのは、偶然ではないと思います。

それでも、まだ足りていない

では解決したのかというと、そうではありません。

2025年度の青葉区民意識調査で、住環境の評価を聞いた項目のうち「悪い」「どちらかというと悪い」の合計が3割を超えたものが3つありました。家賃や住宅の価格、魅力的な飲食店の多さ、そして図書館や図書に関するサービスです。2004年から20年たって、順位こそ変わっても、不満の上位にまだ図書館があります。

取次でできるのは、予約した本の受け取りと返却だけです。棚を眺めて、思いがけない本を手に取るということができません。座って読む場所でもありません。

本の家や地区センターの図書コーナーには自前の蔵書がありますから、棚を眺めることはできます。ただ、本の家の2万8千冊に対して山内図書館は19万4千冊で、7倍近い差があります。市立図書館の予約システムから引けるのは市内全館の約400万冊です。「調べ物のために図書館へ行く」という使い方は、やはり山内図書館まで行くことになります。

「図書館が欲しい」という言葉が指しているのは、たぶんこの差です。

2027年春、青葉台に「その先」ができる

その答えらしきものが、2027年春に青葉台駅前に来ます。

横浜市が「ブックス&ラウンジ(仮称)」と呼んでいる新しい形の施設が、青葉台東急スクエア South-1本館の5階に入ることが決まりました。広さは約300平方メートル。本の貸出と返却だけでなく、ドリンクを飲みながら過ごせる閲覧スペースと、親子で楽しめる読み聞かせのエリアが設けられる予定です。2026年度に設計と工事を進めます。

市は取次拠点を2029年までに40か所程度へ増やす方針で、ブックス&ラウンジはその中の上位モデルという位置づけです。取次に「滞在できる場所」を足したもの、と考えると分かりやすいと思います。

面白いのは場所です。5階はフィリアホールの向かい側で、青葉台駅から歩いてすぐ。区の西側に住む人にとっては、あざみ野まで出るより近くなります。20年前に「区の東の端にしかない」と言われた不便が、ここでようやく埋まります。

建物ではなく、届け方を変えた20年

この20年に青葉区で起きたことを並べると、一本の線になります。

2004年に区民が不便だと言い、区役所が動いた。新しい図書館は建たなかったので、駅にポストを置いた。それが3駅に増え、受け取れる場所が7か所になり、移動図書館が奈良町まで来るようになった。そして2027年、青葉台に座れる場所ができる。

市立図書館の数は、20年前も今も1館のままです。増えたのは建物ではなく、本と人が出会える場所の数でした。もともとあった本の家や地区センターの図書コーナーに、市立図書館の本が届くようになった。既にあるものを使って、届く範囲を広げた20年です。

もし近所の地区センターに行くことがあったら、受付のあたりを見てみてください。予約した本が並んでいる棚があるかもしれません。20年前に誰かが「図書館が足りない」と答えた、その紙の先に置かれたものです。

横浜18区の市立図書館(人口の多い順)

貸出冊数は「横浜市の図書館(横浜市立図書館年報)2025」の令和6年度の数値。1人あたりは横浜市の推計人口(令和8年9月1日現在)で編集部が割ったもの。中央図書館は市全体の中央館のため、1人あたりの比較にはなじみません。
区図書館人口年間貸出1人あたり
港北区港北365,516人656,072冊1.79冊
青葉区山内307,343人650,052冊2.12冊
鶴見区鶴見298,235人378,246冊1.27冊
戸塚区戸塚281,058人646,479冊2.30冊
神奈川区神奈川254,336人531,432冊2.09冊
旭区旭239,304人355,333冊1.48冊
都筑区都筑213,563人1,007,623冊4.72冊
港南区港南208,539人353,004冊1.69冊
保土ケ谷区保土ケ谷203,633人447,296冊2.20冊
南区南198,847人359,185冊1.81冊
金沢区金沢191,737人474,596冊2.48冊
緑区緑179,988人547,228冊3.04冊
磯子区磯子163,626人452,421冊2.76冊
中区中154,496人258,807冊1.68冊
泉区泉149,833人388,613冊2.59冊
瀬谷区瀬谷120,093人264,478冊2.20冊
栄区栄118,688人442,875冊3.73冊
西区中央108,553人1,026,686冊—

青葉区で本を借りられる場所

市立図書館以外の施設は、それぞれが独自の蔵書を持っています。横浜市立図書館とは別の貸出カードが必要です。蔵書数は各施設の公表値で、記載のないものは空欄にしています。市民図書室の開放実施校は横浜市の一覧(2026年8月24日時点)に拠ります。
種類施設蔵書
市立図書館山内図書館(あざみ野2-3-2)194,004冊
コミュニティハウス青葉台コミュニティハウス「本の家」(青葉台2-25-4)28,000冊
地区センター山内・若草台・大場みすずが丘・藤が丘・奈良・美しが丘西の6か所(図書コーナー)—
市民図書室鉄小・田奈小・もえぎ野小・美しが丘東小・嶮山小・鴨志田中の6校—
その他鴨志田・みたけ台・荏田西などのコミュニティハウスにも図書コーナーや市民図書室があります—

青葉区で予約した本を受け取れる場所

横浜市「図書取次サービス」に掲載された青葉区内の7拠点(令和8年9月時点)。利用には横浜市立図書館の利用者登録と、パスワード・メールアドレスの登録が必要です。受付時間は施設ごとに異なります。
施設場所
美しが丘西地区センター美しが丘西
大場みすずが丘地区センター大場町
奈良地区センター奈良町
藤が丘地区センター藤が丘
若草台地区センター若草台
青葉区区民交流センター(旧 田奈ステーション)田奈駅の高架下
青葉台コミュニティハウス「本の家」青葉台(自前の蔵書2万8千冊あり)

本を返せる場所(図書館以外)

駅の返却ポストは山内図書館の案内、はまかぜ号は横浜市の巡回場所一覧(市内30か所)に拠ります。駅ポストの利用には図書館カードが必要で、デジタル図書館カードは使えません。
種類場所備考
駅の返却ポスト青葉台駅(改札口そば)年末年始以外は毎日
駅の返却ポスト市が尾駅(改札外の券売機前)2005年設置・市内初
駅の返却ポストたまプラーザ駅(東急ストア入口付近)年末年始以外は毎日
移動図書館はまかぜ号奈良北(奈良町第三公園)隔週火曜 13:40〜14:20
移動図書館はまかぜ号ならやま(奈良山公園)隔週火曜 14:50〜15:35

この記事のデータについて

青葉区の市立図書館
山内図書館(あざみ野2-3-2)の1館
1館なのは
横浜市18区すべて同じ
本を借りられる他の場所
青葉台コミュニティハウス「本の家」(2万8千冊)/地区センターの図書コーナー6か所/市民図書室6校
青葉区の図書取次拠点
7か所(市内12か所のうち)
駅の返却ポスト
青葉台・市が尾・たまプラーザの3駅
はまかぜ号の巡回
奈良北・ならやまの2か所(市内30か所のうち)
統計の出典
横浜市の図書館(横浜市立図書館年報)2025・令和6年度の数値
人口の出典
横浜市 推計人口・世帯数(令和8年9月1日現在)
写真
ヘッダー・一覧の画像は生成AIで作成したイメージ
各図書館の貸出冊数・入館者数・蔵書数・延床面積・座席数は、横浜市中央図書館が公表した「横浜市の図書館(横浜市立図書館年報)2025」に掲載された令和6年度(2024年度)の数値です。1人あたりの数字は、この貸出冊数・蔵書数を横浜市の推計人口(令和8年9月1日現在)で編集部が割ったものです。年報の数値と人口の時点が異なるため、おおよその比較としてお読みください。中央図書館は西区にありますが市全体の中央館で、蔵書177万冊を市内全域に貸し出す役割を持つため、区民1人あたりで見ると他区と比較できない数字になります。図書取次拠点の数と一覧は横浜市の「図書取次サービス」のページ(令和8年9月時点で12か所)、移動図書館はまかぜ号の巡回場所は同市の巡回場所一覧(市内30か所)に拠ります。2004年度の区民意識調査と2005年の市が尾駅への図書返却ポスト設置の経緯は、横浜市政策局の調査季報第157号に掲載された区役所職員による報告に拠ります。区の面積は各区の公表値です。青葉台コミュニティハウス「本の家」の蔵書数と沿革は同館の公式サイトおよび同館館長へのインタビュー記事に、地区センターの数と図書コーナーは横浜市の地区センター案内に、市民図書室の開放実施校は横浜市の「市民図書室開放実施校」のページ(2026年8月24日時点)に拠ります。これらの施設の蔵書は横浜市立図書館のものとは別で、貸出カードも別に作る必要があります。ヘッダーと一覧の写真は生成AIで作成したイメージで、実在の施設ではありません。

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