横浜市青葉区の地形
青葉区データ

青葉区の坂を968地点、測ってみた
全国2位のまちは、平均2.18度傾いていた

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2026年9月13日取材・文 横浜青葉チャンネル編集部

青葉区の男性の平均寿命は83.9歳で、対象1,887市区町村のうち2位です(厚生労働省「令和2年市区町村別生命表」。この統計は5年ごとで、2023年5月に公表されたこれが最新です)。1位は隣の川崎市麻生区。この2つが並ぶ理由は誰にも断定できませんが、ひとつ気になることがありました。どちらも、とても坂が多い。そこで編集部で、区内8駅のまわりの標高を968地点ぶん実測しました。青葉区の平均傾斜は2.18度、いちばん急なのはたまプラーザでした。

この記事のポイント

01

青葉区の平均寿命は男性83.9歳で全国2位

厚生労働省「令和2年市区町村別生命表」(2023年5月公表・対象1,887市区町村)で、男性の平均寿命は川崎市麻生区の84.0歳に次ぐ2位。2005年と2015年は全国1位でした。女性も88.8歳で13位です。全国平均は男性81.49歳・女性87.60歳。この統計は国勢調査に合わせて5年ごとに作られるため、これが現時点の最新です。

02

編集部で968地点の標高を測った

区内8駅の周囲を、半径200mから1,000mまで15度きざみで実測。平均傾斜は2.18度でした。同じ方法で測った横浜駅の周囲は1.35度、鶴見駅は1.27度。平均寿命が全国で最も短い大阪市西成区(新今宮駅周辺)は0.29度でした。

03

いちばん急なのはたまプラーザ

平均傾斜2.59度。半径1km内の最高地点は87.2m、最低は18.7mで、高低差は68.5m。駅の標高は44mなので、家が駅の上にも下にもあるということです。いちばん平らなのは市が尾(1.63度)で、鶴見川の谷にある駅でした。

坂は、この街のいちばん有名な不便です

青葉区に住んでいる人が、区の外の人に言われて少し困る話がふたつあります。ひとつは家賃。もうひとつは坂です。駅から家までが上り。買い物の帰りが上り。自転車を買ったのに押している。ベビーカーで通れる道を覚えている。このあたりは、住んでみないと分からない不便です。

その一方で、青葉区にはもうひとつ有名な数字があります。男性の平均寿命が83.9歳で、全国の市区町村のうち2位。厚生労働省が5年ごとに出している市区町村別生命表の2020年のデータで、2023年5月に公表されたこれが最新です。2005年と2015年は全国1位でした。全国平均は81.49歳ですから、2.4歳ほど長い。女性も88.8歳で13位です。

2020年のデータというと古そうに見えますが、これが最新です。市区町村別生命表は国勢調査の年に合わせて5年ごとに作られる統計で、2000年から2020年までの5回ぶんしかありません。2020年分が2023年5月12日に公表されたあと、新しいものは出ていません。次は2025年の国勢調査をもとにしたものになりますが、その土台になる全国の完全生命表(第24回)の公表予定が2027年3月ごろなので、市区町村別が出るのはさらにあとです。毎年7月に発表される「簡易生命表」は全国の数字だけで、区や市町村ごとの値は入りません(2025年の全国平均は男性81.35歳・女性87.33歳)。つまり、区ごとの平均寿命を見たいときは、いまはこの2020年のデータが唯一の最新版ということになります。

1位はどこかというと、川崎市麻生区(84.0歳)です。青葉区の北側で接している区で、男女ともに全国1位。この2つの区は、鉄町と早野のあたりで境界を接しています。日本でいちばん平均寿命が長い場所と、2番目に長い場所が、隣どうしで並んでいることになります。

ひとつ補足があります。2020年の市区町村別生命表では、95歳以上の計算方法が前回から変更されました。そのため厚生労働省は、2015年のデータを新しい方法で計算し直したものも参考として出しています。それで見ると2015年は青葉区が83.2歳で1位、麻生区が83.1歳で2位。順位が入れ替わったのは5年のあいだの変化であって、計算方法が変わったからではないということです。

なぜ長いのかは、正直なところ誰にも断定できません。区の福祉保健センターも、2023年のタウンニュースの取材に「寿命の延伸自体の要因は特定できない」と答えています。挙げられているのは、地域ケアプラザや自治会町内会による健康づくりの活動、区民の健康意識の高さ、市内でいちばん多い公園、医療や介護の施設が近くにあること。どれも納得はできますが、ひとつが決定的だという話ではありません。

ただ、麻生区と青葉区に共通することで、すぐに思いつくものがありました。どちらも、とても坂が多い。これは数字にできるはずです。そこで編集部で測ってみました。

使ったのは国土地理院の標高データです。緯度と経度を渡すと、その地点の標高を返してくれます。区内8駅(たまプラーザ・あざみ野・江田・市が尾・藤が丘・青葉台・こどもの国・恩田)を中心に、半径200m、400m、600m、800m、1,000mの円周上を15度きざみで、1駅あたり120地点。駅そのものを足して121地点、8駅で968地点になります。それぞれの点で標高を取り、駅から外へ向かって隣り合う点の差から傾きを出しました。

青葉区8駅の平均傾斜は2.18度でした。2度と言われても急なのか分かりませんが、比較すると見えてきます。同じ方法で横浜駅の周囲を測ると1.35度、鶴見駅は1.27度。そして、平均寿命が全国でいちばん短い大阪市西成区(新今宮駅の周囲)は0.29度でした。半径1km内の高低差は16.7m。ほとんど平らです。

青葉区でいちばん急だったのは、たまプラーザでした。平均傾斜2.59度。半径1km以内の最高地点が87.2m、最低が18.7mで、高低差は68.5m。ビルなら20階ぶんを超える差が、駅から1km以内に収まっています。駅そのものの標高が44mなので、駅より高いところにも低いところにも家がある。たまプラーザに住んでいる人が「坂」と言うとき、それは上りとも下りとも決まっていないわけです。

次があざみ野で2.46度。あざみ野の駅は標高28.9mで、これは意外に低い。駅から北東へ1km行くと65.6mまで上がります。あざみ野に住む人が「駅まで下り、帰りは上り」と言うのは、数字のとおりでした。

いちばん平らだったのは市が尾で1.63度です。これは納得のいく結果でした。市が尾駅の標高は20.9mで、区内8駅でいちばん低い。鶴見川が流れる谷の底にある駅です。区役所もこの谷にあります。ただし平均が低いだけで、半径1km内の高低差は57.2m。谷から出れば、どちらに行っても上ります。市が尾に「高低差50mチャレンジコース」というウォーキングコースが区の公式マップにあるくらいです。

そして、ここからは慎重に書きます。坂が多いことと長生きすることに関係があるのか。これについては研究があります。千葉大学などが参加するJAGES(日本老年学的評価研究)が2010年に行った調査で、介護認定を受けていない65歳以上の8,904人のデータを分析したところ、住んでいる地域(小学校区)の平均傾斜が1.48度上がると、血糖値のコントロールがうまくいっていない糖尿病(ヘモグロビンA1cが7.5%以上)の人が18%少なかった、という結果が出ています(Social Science & Medicine, 2017年6月)。

同じJAGESのデータを使った2026年4月の研究では、全国23市町の高齢者27,346人を約3年間追跡して、「坂や段差など歩くのが大変な場所」が中程度ある地域に住む高齢者は、そうした場所が少ない地域に住む人より転倒の相対リスクが6%低かったという結果も出ています。運動や散歩に適した公園や歩道が多い地域では11%低い。こちらはArchives of Gerontology and Geriatricsに掲載されました。

ただし、これらの研究は青葉区を対象にしたものではありません。坂には反対の面もあります。同じ研究グループは、傾斜が急だと筋力は使うけれど外出や歩行の時間が短くなるという、逆向きの可能性も指摘しています。坂がきついから出かけなくなる人は確実にいます。坂を上れなくなってから引っ越す人もいます。だから「青葉区は坂が多いから長生き」とは書けません。因果関係を示したデータは、少なくとも私たちの手元にはありません。

それでも、測ってみて分かったことがあります。青葉区の坂は、この街が持っているものの中でいちばん数字にしやすいものでした。公園が234か所あるという事実(2025年時点・市内でいちばん多い)も、区が19コースのウォーキングマップを桐蔭横浜大学と一緒に作っている事実も、区民が歩く街だという話につながります。そしてその歩く場所は、平らではない。2.18度傾いています。

坂は不便です。それは本当です。引っ越してきた人が最初に驚くのは坂で、年をとって最初に困るのも坂です。ただ、その不便をこれだけ毎日上り下りしている街が、たまたま日本で2番目に長生きな街でもある。坂の下から見上げるときに、それを思い出すと少し気分が変わるかもしれません。

測ったデータは記事の中にすべて出しました。駅と半径と刻みを書いてありますから、同じ方法で誰でも測り直せます。もし「うちの坂のほうが急だ」という心当たりがあれば、お問い合わせフォームから教えてください。次は駅ではなく、坂そのものの名前で測ってみます。

青葉区8駅の坂(実測値)

国土地理院の標高APIから編集部が2026年9月13日に取得。各駅を中心に半径200〜1,000mの円周上を15度きざみで測った121地点の値。平均傾斜は駅から外へ向かう200mごとの標高差から求めた傾きの平均で、行政・学術の傾斜度指標とは計算方法が異なります。
駅の標高1km内の最高1km内の最低高低差平均傾斜
たまプラーザ44.0m87.2m18.7m68.5m2.59度
あざみ野28.9m65.6m17.9m47.7m2.46度
藤が丘51.0m64.1m19.3m44.8m2.32度
こどもの国48.6m72.0m25.8m46.2m2.30度
江田47.9m78.2m21.4m56.8m2.26度
青葉台52.2m68.1m24.7m43.4m2.13度
恩田27.2m76.4m21.9m54.5m1.74度
市が尾20.9m69.7m12.5m57.2m1.63度

ほかの街と比べてみる

比較のため、同じ方法・同じ刻みで測った他の駅の周囲。各区を代表する数字ではなく、その駅の周囲1kmの数字です。平均寿命は厚生労働省「令和2年市区町村別生命表」の男性の値。
測った場所平均傾斜高低差その区の男性平均寿命
本郷台(横浜市栄区)2.73度62.7m
たまプラーザ(青葉区)2.59度68.5m83.9歳/全国2位
新百合ヶ丘(川崎市麻生区)2.27度63.7m84.0歳/全国1位
青葉区8駅の平均2.18度83.9歳/全国2位
横浜(西区)1.35度49.9m
鶴見(鶴見区)1.27度43.4m
新今宮(大阪市西成区)0.29度16.7m73.2歳/全国最下位

この記事のデータについて

測ったもの
区内8駅の周囲の標高
地点数
968地点(1駅あたり121地点)
測り方
半径200〜1,000mの円周上を15度きざみ
データ
国土地理院 標高API(2026年9月13日取得)
平均傾斜
青葉区8駅の平均 2.18度
平均寿命
男性83.9歳=全国2位(厚生労働省「令和2年市区町村別生命表」2023年5月公表)
平均寿命は厚生労働省「令和2年市区町村別生命表」(2023年5月12日公表)によるものです。この統計は国勢調査に合わせて5年ごとに作成され、2020年分が最新です。毎年公表される「簡易生命表」は全国の値のみで、市区町村別の値は含まれません。標高は国土地理院の標高API(数値標高モデル)から編集部が2026年9月13日に取得した値です。各駅の位置を中心に、半径200m・400m・600m・800m・1,000mの円周上を15度きざみで測り、1駅あたり120地点、8駅で960地点+駅の地点を測りました。ここで言う「平均傾斜」は、駅から放射状に外へ向かうときの隣り合う2地点(200mごと)の標高差から求めた傾きの平均で、行政や学術機関が定める地形分類や傾斜度の指標とは計算方法が異なります。駅の周囲を等間隔で測った値なので、実際に人が歩く道の勾配とも一致しません。坂と健康の関係について紹介した研究は、青葉区を対象にしたものではありません。この記事は坂が長寿の原因であると主張するものではなく、青葉区の地形を数字で示すことを目的としています。記事の写真は、青葉区の特定の場所を撮影したものではなく、郊外の坂の住宅街のイメージとして画像生成AIで作成したものです。

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